1. はじめに:旅人から「訪問者」へ、静寂のトンネルへ
BISEZAKI BASEプロジェクトが新しくお届けする連載「備瀬さんぽ」。記念すべき第1回は、この集落のシンボルであり、最も神聖な空間である「備瀬のフクギ並木」を歩きます。
備瀬のフクギ並木は、単なる美しい観光スポットではありません。それは、400年にわたり、この地に暮らす人々が、強烈な海風から家屋を守るために築き上げてきた、「生きた風景」です。
並木道に一歩足を踏み入れると、外界の喧騒が遠ざかり、まるで時間がゆっくりと流れ出すような感覚に包まれます。ここでは、観光客として写真を撮るだけでなく、訪問者としての心構えを持ち、この集落の「静けさ」を全身で感じてみてください。
2. 知恵の歴史:なぜ備瀬にフクギが立ち並ぶのか
備瀬集落のフクギ並木は、琉球王朝時代から国を挙げて取り入れられた風水の思想に基づいて作られた、「知恵の贈り物」です。
- 防風林としての役割: 熱帯性常緑高木であるフクギ(福木)は葉の密度が高く、海沿いの集落では古くから防風林として家屋を守るために活用されてきました。
- 樹齢300年の重み: 並木の中には、樹齢300年を超える巨木も存在し、その根は互いに絡み合い、長い年月をかけて人々の暮らしを見守ってきました。
- 集落のシンボル: 並木の入り口近くには、2本の巨木が寄り添う「夫婦フクギ」があり、夫婦円満や幸せを呼ぶパワースポットとして親しまれています。
3. フクギ並木のその先に:静けさが連れていく絶景
緑のトンネルを抜ける散策のハイライトは、道の終点に待つ景色です。
並木道(往復約2km、徒歩約30分〜1時間)を歩き進めると、パッと視界が開き、エメラルドグリーンの備瀬海岸と雄大な東シナ海が目の前に広がります。
そして、その海の向こうには、独特な山容の伊江島タッチュー(城山)が浮かびます。
- 備瀬崎(びせざき): 並木道を抜けた岬にあり、透明度が高く、カラフルな熱帯魚も確認できるほどの美しい海岸線が広がります。潮が引くと、サンゴ礁でできた潮溜まり(天然プール)が現れ、磯遊びを楽しむこともできます。
- 生活が垣間見える小路: 順路から少し逸れた場所には、昔ながらの石垣や、住宅と住宅の間の小さな緑の小路が続き、人々の生活感が垣間見えるのも備瀬の魅力です。
4. 寄り道スポット(カフェ・雑貨・牛車)
静かな散策に疲れたら、並木道の中に点在する素敵なスポットで一息つきましょう。
- 【静かな安らぎのカフェ】 フクギ並木の緑に包まれた古民家カフェ。店内は静かでゆったりとした時間が流れており、「時間の質」を大切にする備瀬の理念にぴったり。沖縄ぜんざいや、地元の素材を活かしたスイーツを楽しめます。
- 【備瀬を味わうランチ処】 並木道の途中にひっそりと佇む、地元食材を活かした沖縄そばや定食を提供する食事処。派手さはありませんが、地元の暮らしの味をそのままに感じられる温かい料理が魅力。散策途中のランチに最適です。
- 【ゆったりとした移動を楽しむ】 ノスタルジックな牛車でのんびり並木道を進むのも、備瀬さんぽならではの体験です。
【次回の備瀬さんぽ予告】
次回は、備瀬集落の隠された「聖域」に焦点を当てます。神が降り立ったといわれるワルミや、集落の基準となった軸石など、知的好奇心を満たす「生きた知恵」を巡ります。どうぞお楽しみに!

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